追撃の手をゆるめるなⅣ
総登山も、間もなく終わろうとしていた。
三月二十九日の朝、山本伸一は、登山会の進行状況を報告するために、戸田城聖の寝ている理鏡坊の二階に上がっていった。戸田は布団の中で静かに目を開けて、天井を見ながら、物思いに耽っているようであった。
「先生、ご容体はいかがでしょうか」
伸一が枕元に正座すると、戸田は顔だけ伸一の方に向けた。もはや、自分
では寝返りも打てぬほど、彼の体は衰弱していたのである。
「大丈夫だ。どうだ・・・総登山の様子は」
かすれた声で、とぎれとぎれに戸田が言った。
伸一はあの所化頭の一件を戸田に伝えた。戸田は眼を閉じて伸一の報告を聞いていたが、聞き終わると、さも残念そうな表情で語り始めた。
「情けないことだな・・・。これは、小さい事のようだが、・・・・宗門の腐敗、堕落という実に大きな問題をはらんでいるのだ。なぜ、堕落が始まり、腐敗していくのか・・・。それは、広宣流布という至上の目的に生きることを忘れているからなのだ。この一点が狂えば、すべてが狂ってしまう」
「残念なことだが・・・令法久住を口にしながらも、多くの僧侶が考えていることは、保身であり、私利私欲をいかに満たすかだ。・・・つまり、欲望の虜となり、畜生の心に堕してしまっているのだ。だから・・・自分より弱い立場の所化小僧などは、鬱憤晴らしのオモチャとしか考えない・・・・。また、学会員のことも、供養を運んでくる奴隷ぐらいにしか思わず、威張り散らす者もいるのだ・・・・」
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