追撃の手をゆるめるなⅥ
その言葉は、しばしば途切れたが、ただならぬ気迫にあふれていた。
「衣の権威で、学会を奴隷のように意のままに操り、支配しようとする法主も、出てくるかもしれぬ。・・・・ことに、宗門の経済的な基盤が整い、金を持つようになれば、学会を切り捨てようとするにちがいない・・・。戦時中と同じように、宗門は、正法を滅亡させる元凶となり、天魔の住処にならないとも、限らないのだ・・・・。しかし・・・、日蓮大聖人の正法を滅ぼすようなことがあっては、断じてならない」
そして、戸田は最後の力を振り絞るように叫んだ。
「そのために、宗門に巣くう邪悪とは、断固、戦え。・・・・いいか、伸一。一歩も退いてはならんぞ。・・・・追撃の手をゆるめるな!」
それは、炎のような言葉であった。
瞬間、戸田の眼が燃え輝いた。これが、戸田の最後の指導であり、愛弟子への遺言となったのである。伸一は、その言々句々を命に焼きつけた。
「先生のお言葉、決して、忘れはいたしません」
伸一の言葉を聞くと、戸田は力尽きたかのように、静かに眼を閉じた。
しばらくすると、戸田の安らかな寝息が聞こえてきた。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。