獄中で四度殴られた戸田先生
「この野郎!町の風呂でも入っている気か!」
「貴様!生意気に悠々と湯を浴びただろう!けしからん奴だ!横着野郎!」
狂気の看守が「厳さん」(戸田先生)の頬を三度殴った。
【彼は激情を抑えて手拭を絞り、身体を拭いていると両眼からはらはら涙が落ちた。
『今日で三度目・・・』厳さんは独房へ帰って行きながら、ふと呟いた。
警察の留置場で一度・・・・ここへ来てから、二度、三度目になる。
(そうだ!もう一度、撲られるぞ!四度目に撲られたら、それは帰れる時だ!)
『あ!』厳さんは叫んで身体を反らした。高橋看守が腕の麻縄を取って振り上げたからであった。『懲してやる!』憎々しげに叫ぶと同時に、厳さんの背中は麻縄で激しく打たれ、それが一遍ではなく、ぴしり!ぴしり!ぴしり!と濡れた物を叩いているような音を響かせて二十数回続き、溜めにいた囚人が総立ちになったのではあったが、彼が背中に火が走るような感じを受けたのは最初の一遍だけ、二遍目からは きた! 四回目!四回目がきた!と心で叫んでいるだけで、少しの痛みも感じてはいなかった。
『これで、赦してやる』
高橋看守が力いっぱいに厳さんの背中を打って、汗の粒々を額ゃ鼻の頭に光らせていった瞬間、彼の心の内で、罪が終わった!四回目がきて、罪が終わった!と叫んでおり、薄暗い電燈のともっている独房へ帰った時は、顔いっぱいに歓喜を漲らせており、眼鏡の底の両眼が輝いているようであった】
(小説 人間革命より一部抜粋 参考文献 地涌489号)
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